周波数領域/時間領域RF回路シミュレータ
SmartSpice RFは、時間領域のシューティング法と周波数領域のハーモニック・バランス法の組み合わせを使用したGHz帯RF IC向けの高精度回路シミュレータです。SPICEネットリストやSpectreネットリストを使用して、非線形回路の高調波ひずみ、相互変調積、利得、ノイズ、発振器の位相ノイズを、精確に効率良くシミュレーションします。
はじめに
RF回路の持つ特性を十分に引き出すことができるRFシミュレータを利用すると、汎用シミュレータでは実用的ではない、あるいは扱いが困難な問題に対処できます。RF回路が持つ特性の中でも特に重要なのは、RF信号のスペクトルにおける相対的なスパース性です。しかし、これらの信号が持つ特性はそれぞれ異なっているため、有効なシミュレーション結果を得るには、それぞれに対応した異なるシミュレーション手法が必要となります。RFシミュレータは汎用シミュレータでは困難な課題にも対応できますが、その一方で、以下のような新たな課題が生じています。
- 完全なRFではない大規模回路にRFシミュレーションを適用するのは容易ではない
- 高度な専門性を要する解析を数多く行う必要があるため、必要な各解析を回路設計者が効率的に習得して使用できるようになるには困難が伴う
SmartSpice RFは、RF回路の時変動作点を求めるために大信号解析を実行し、それに続けて、多くの小信号解析を実行して指定周波数における回路応答を明らかにします。また、SmartSpice RFは、周波数領域のハーモニック・バランス法(HB)と時間領域のシューティング法を組み合わせて定常状態解析を行います。この手法により、最新の高周波集積回路(RFIC)に対しても高速かつ高精度なシミュレーションを行うことができます。SmartSpice RFでは、増幅器、フィルタ、検出器、乗算器、ミキサ、発振器、スイッチド・キャパシタなどの強制あるいは自律周期/準周期系を解析できます。SmartSpice RFで利用できるエンベローブ解析とデジタル変調電源ライブラリをRF回路の設計に活用することで、通信システム用RF回路のシミュレーションを効率的に行うことができます。
おもな特長
- 周波数領域のハーモニック・バランス法および時間領域のシューティング法による、シングルトーン信号励起の周期的定常状態解析に対応
- マルチトーン信号励起の準周期的定常状態(スペクトル)解析
- 定常状態AC(HAC、SPAC)小信号解析
- 定常状態伝達関数(HTF、SPTF)を使用して、変換効率、イメージおよび側波帯の除去、LOフィードスルー、電源電圧変動除去を計算
- 定常状態NET(HNET、SPNET)により、 周波数変換器として動作する2ポート回路のSパラメータと、S、Z、Y、Hパラメータ、安定係数、様々な異なる利得、安定円などを計算
- 定常状態ノイズ(HNOISE、SPNOISE)により、 増幅器、ミキサ、および発振器の位相ノイズにおける出力ノイズ・スペクトルを解析
- 発振器の周期的定常状態解析(HOSCIL)をハーモニック・バランス法により直接実行し、位相ノイズを抽出
- 周期的安定性解析(PSTB)により、経時変化するフィードバック回路の局所的な安定性を解析
- 回路エンベロープ・シミュレーションでは、時間スイープによるハーモニック・バランス法を使用して、増幅器/ミキサのスペクトル再成長、I/Qパラメータ、ACPR、NPR、EVM、BERのシミュレーション、ならびに通信システムにおける伝送リンク品質の解析評価が可能
- スミス・チャート、アイ・ダイアグラム、スペクトル・プロット、ヒストグラム、SN比の計算、利得円、安定円、信号空間ダイアグラムを使用可能
- 回路/パラメータ・オプティマイザにより利得、整合回路、IP3、消費電力を最適化し、プロセスの移行が可能
低ノイズ増幅器(LNA)の例 |
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メリット
- ハーモニック・バランス・エンジンにより、マルチトーン信号源駆動の非線形回路における周波数領域の定常状態大信号解析が可能
- 時間領域のシューティング法エンジンにより、非線形性の強い回路の周期的定常状態のシミュレーションを実行可能
- インタラクティブな制御パラメータのセットを備えたソルバ(Spectral Newton法、連続法、GMRES法)により最適な収束性を実現
- Gatewayスケマティック・エディタとの連携により、回路図の入力、シミュレーション制御のインターフェース、およびテストベンチの設計が可能
- 一般的なアナログ/ミックスド・シグナル/RFデザイン・フローとの統合が可能
- シルバコのPDK対応ミックスド・シグナル/RFデザイン・フローを構成するシミュレータ
- お客様とサード・パーティ企業の大切な知的財産を守る、シルバコの強力な暗号化技術を利用可能
使用用途
- 増幅器、ミキサ、乗算器、発振器、VCO、AGC、PLL、マルチプレクサ、デマルチプレクサ、クロック・リカバリ/CDRの解析
- Wireless standards:GMSK,、MPSK、MQAM、MFSK、EDGE、OFDM、W-CDMAなど無線規格に対応
パワーアンプのACPRシミュレーション |
PI/4-DQPSKの軌跡ダイアグラム |
技術仕様
- 入力: Gatewayネットリスト、SPICEネットリスト、Sパラメータ
- 出力: RAWファイル、解析結果、測定データ
- RF測定機能
- 1dB圧縮点
- N次のインターセプト・ポイント
- N次の相互変調積
- ミキサ変換利得
- 2ポート・ノイズ・パラメータ
- SSBおよびDSBノイズ指数
- 出力ノイズのパワー・スペクトル密度
- 最小ノイズ指数
- 位相ノイズ
- Gamma Opt
- 入力/出力安定円
- 利得円
- インピーダンス/アドミタンス軌跡の周波数特性
- 大信号のSパラメータおよびK係数
- 全高調波ひずみ
- 電力付加効率
- Sパラメータ