パワー・エレクトロニクス (PE) 市場はEV (電気自動車) やHEV (ハイブリッド車) の需要の増大により、急速に成長しています。パワー・デバイスは、設計、トランジスタ・レベルでの製造革新によるデバイス性能の向上、開発コストや製造コストの削減に役立っています。高電圧パワー・デバイスの領域において、炭化ケイ素 (SiC)、窒化ガリウム (GaN)、その他ワイドバンドギャップ材料はシリコンに取って代わり始めています。パワー・デバイス市場向けに、シリコン、SiC、またはGaN テクノロジを使用して設計、製造している誰もが、これまで以上に詳しくデバイスを理解し、重要な性能指数を向上するためには、研究開発の一環としてTCADシミュレーションを使用する必要があります。シルバコのTCADはパワー・デバイス・シミュレーションのマーケット・リーダであり、各種製品は25年にわたり世界中のファウンドリやファブレス半導体企業で使用されています。

デバイス・エンジニアはTCADのパワー・テクノロジ・モデリングにより、動作条件、プレーナ構造かトレンチ構造かといったデバイス・テクノロジ、または不純物注入やレイヤ膜厚などの半導体テクノロジを仮想的に変更することが可能となります。この調査では、デバイスを定性的、そして定量的に理解することができます。繰り返しシミュレーションを実行すると、デバイス性能および動作領域を最適化することもできます。

図1 IGBTデバイスのプレーナ・セル対トレンチ・セル
図2 スプリット・ゲートUMOSFET製作で重要なステップとなるプロセス・シミュレーション

エンジニアは最適化されたデバイスを使用してより良い半導体製品を製作できるため、製造と特性評価が必要な試作ウェハの数が減少し、量産までの時間を短縮することができます。ファブレス・エンジニアにとっての利点は、歩留まりや性能を向上する製造プロセスの改善を選定したファウンドリに提案できるようになることです。

各材料のデバイス・タイプは以下のとおりです:

  • シリコン: LDMOS、IGBT、Bipolar、DMOSFET、ショットキーバリアダイオード、サイリスタ
  • SiC: ダイオード、MOSFET、DMOSFET、IGBT
  • GaN: ダイオード、横型HEMT、縦型HEMT

シルバコのTCADプロセスおよびデバイス・モデリング・ソリューションでは、現実に近いデバイスを2次元または3次元で仮想的に試作し、DC、ADおよび過渡解析でデバイス性能のシミュレーションを行うことができます。さらに、物理ベースのTCADデバイスを周囲のSPICE回路と組み合わせる機能により、実際の回路でデバイス性能を解析することが可能となります。

2次元/3次元デバイス・シミュレーション

TCADデバイス・シミュレーションのドリフト拡散エンジンでは、物理精度でデバイス性能を解析します。設計者は、温度効果を考慮し、特定モジュールを使用してDevice-SPICEのミックスド・シミュレーションを実行可能です。

  • Gigaモジュールでは自己発熱デバイスのシミュレーションが可能で、デバイス内の大電流による局所的な温度を自己整合的に解析します。
  • Mixed Modeモジュールでは物理精度のTCADデバイスを使用してSPICEシミュレーションを実行し、大規模回路でデバイス動作を確認することが可能となります。寄生素子、受動素子、能動素子を含めてシミュレーションすることで、デバイス性能を最適化することができます。
図3 a) IGBTの短絡回路テストの3次元Mixed Modeシミュレーションの b)短絡回路の波形 c)故障箇所t = 5.57 usでの3次元電子電流密度の分布

パワー・デバイスの性能は、物理レイアウトのエッジやコーナに大きく影響されることがあります。たとえば、ほとんどのパワー・デバイスで、高電圧絶縁が起こる最初の場所は、デザインのコーナです。2次元 (高速シミュレーション) と3次元 (高精度) を容易に切替できる機能も、実用的なエンジニアリング手法を取りながらTCADの問題に取り組むための大きな強みです。

2次元/3次元プロセス・シミュレーション

プロセス・シミュレーションは、レイヤ膜厚のユーザ定義、組成比、不純物注入といったユーザの仕様に沿って、GDSIIレイアウト・フォーマットに基づいた2次元および3次元TCAD構造の構築に、最も一般的に使用されています。

現実的なプロセス・モデル、特に高精度なドーピング表現を持つものは物理ベースです。使用される材料に依存して、プロセス・モデルの成熟度は異なります。

  • シリコン: イオン注入、拡散、酸化などを使用するプロセス・シミュレーションは、半導体業界での数十年にわたるCMOS研究開発により非常に成熟しています。
  • SiC: シルバコは、投資パートナーシップおよび研究スポンサーシップを通じて、モンテカルロ・イオン注入、ドーパント活性化/拡散、方向依存性酸化、エピタキシのシミュレーションに対応します。シルバコのソリューションは成熟しており、引き続きお客様や研究機関と協業し、これを強化していきます。
    図4 4HSiCテクノロジ、ドライO2またはH2O条件下で拡散時の物理酸化プロセス・シミュレーション
  • GaN: GaNのプロセス・シミュレーションは急速に進歩しています。GaNのプロセス・シミュレーションには、シミュレーションで最も複雑なプロセス・ステップとなる酸化は通常必要ありません。一方で、エピタキシ・シミュレーションはGaNで重要なプロセス・ステップであり、成熟にはかなりの研究開発が必要となります。現在、ドーパント注入および活性化は利用可能ですが、その他プロセス・ステップは調査が進められているところです。
    図5 GaNへのイオン注入後のドーパント活性化効率は、低注入濃度およびアニール温度での電気的活性化の低下をVictory Processで予測します。
    図6 GaN JBS整流器のI-V曲線のTCADデバイス・シミュレーションは、順方向電流密度JDおよびオン抵抗Ronに強く影響を及ぼすアニール温度TAを示します。

デザインとテクノロジの同時最適化

デザインとテクノロジの同時最適化 (DTCO) は、テクノロジ・エレメントが回路のパフォーマンスに与える影響を考慮しながら新しい半導体プロセス・ノードを開発するためのソフトウェア・ベース手法として説明することができます。この繰り返しの同時最適化は、シルバコのVirtual Wafer FabツールおよびDeckBuildランタイム環境により自動化されています。

シルバコのTCADフローは通常以下のステップとなります:

  • レイアウト・ファイル (GDSII) を読み込む
  • Victory Processを使用してテスト・デバイスの2次元または3次元でプロセス・シミュレーションを実行 (FEOL)
  • Victory Meshを使用してデバイス構造の再メッシュを高精度に実行
  • Victory Deviceを使用してデバイスの電気的性能を2次元および3次元でシミュレーション
  • Utmost IVを使用して、Victory Deviceで生成されたI/V曲線をもとにSPICEシミュレーションをするためのTCADコンパクトモデルを抽出
  • Cleverの高精度フィールド・ソルバを使用して寄生容量および抵抗を抽出 (BEOL)
  • SmartSpiceを使用して、能動デバイスおよび寄生素子を含むアノテートされたSPICEネットリストのシミュレーションを実行
  • パフォーマンスを確認し、期待されるパフォーマンスが得られるまで前の手順を再度実行
図7 DTCOフローのコンポーネント
図8 Utmost IVモデリングは、シリコン、SiC、GaNデバイスに対応しています。
図9 Utmost IVでASM-GaN HEMTコンパクトモデルを使用し自己発熱効果あり、なしでI-V特性を生成するTCADデバイス・シミュレーションの例

シルバコTCADを使用すると、エンジニアはより優れた半導体製品を作ることが可能となり、量産までの時間を短縮し、ファウンドリに歩留まりやパフォーマンスを向上するプロセスの改善を提案する見識を得ることができます。